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アイフル答弁書 全文公開

2009年09月14日 03:52

約束どおり、2009年6月下旬に送達されたアイフル答弁書を全文アップします。
文中の太字・下線等はすべて原文のままとなっています。

では、噂どおりのクソったれな内容をご堪能ください。

↓ ここから ↓


被告(アイフル株式会社)の認否


当事者間の事実について
被告が賃金業者であることは認める。

原被告間の取引内容について
取引年月日・貸付額・返済額について、被告作成取引計算書と合致する部分についてのみ認め、仮に合致しない部分が存在すれば否認する。原告作成取引計算書のその余の部分については争う。

利息制限法所定利率に引き直す際の適用利率について
原被告間の取引を利息制限法所定利率に引き直すこと自体争うものの、仮に利息制限法所定利率に引き直したとしても、その適用される利率につき、利息制限法第一条に定める利率による計算とは異なるため、争う。

不当利得について
過払金については、争う。

悪意の受益者について
被告が悪意の受益者であるとの主張は争う。仮に被告が悪意の受益者と評価されたとしても、民法704条の利息を付すべき始期は訴状送達の翌日とするべきである。

被告(アイフル株式会社)の主張

第1. はじめに
1. 利息制限法1条2項の死文化と貸金業規制法の制定
 利息制限法(昭和29年5月15日法律100号)には、1条2項に、「債務者は、前項の超過部分を任意に支払ったときは、同項の規定にかかわらず、その返還を請求することができない。」旨が現在においても規定されている。
  しかしながら、利息制限法を超える弁済を行ったケースについて、その超過部分の返還を求めることは利息制限法1条2項の規定により出来ないが、超過部分は元来無効であるからこれを残存元本などの残債務に当然充当するものとし(最高裁昭和39年11月18日判決)、その結果残債務がなくなった場合においては、その超過部分について利息制限法の法条の適用はなく、一般民法の不当利得の規定に従い返還を請求することができる(最高裁昭和43年11月13日判決)とされ、利息制限法1条2項は死文化した。
 その後、我が国は高度成長最終期の昭和50年代に入り、サラ金三悪などとして社会問題化が進んでいたころ、出資の受け入れ、預り金及び金利等の取り締まりに関する法律(昭和29年6月23日法律195号、以下「出資法」という。)では、年109.5%の割合による上限金利規定が設けられ、貸金業者と消費者との間で締結される金利もその批判のひとつになっていたようである。
  そのような中、昭和 52年2月、総理府・警察庁・経済企画庁・法務省・大蔵省・自治省による貸金業問題関係省庁連絡会が設置され、この問題の解決に取り組むこととなった。このとき、政府与党のみならず、各政党及び日弁連も立法化へむけて積極的な取り組みを行っていた。そして昭和54年5月29日、貸金業規制法及び出資法の一部改正法案が自民党から提出され、社会・公明・共産などの各政党からも法案が提出される事態となったが、いずれも廃案ないし継続審議が続いた結果、ようやく昭和58年4月28日衆議院本会議にて当該関連二法が可決・成立し、同年5月13日に公布され、同年11月1日施行された。このような長期間の渡って、幾度もなく審理されていた背景としては、上限金利をどこまで引き下げるか(下げすぎると健全な貸金業者が消滅しヤミ金融が跋扈する)、前期最高裁39年判決及び43年判決をどのようにクリアして利息制限法超過利息による貸金業者の営業を認容させるかなどが大きな焦点であったといわれている。(大蔵省銀行局内貸金業関連法令研究会編者「一問一答貸金業規制法の解説」金融財政事情研究会昭和58年6月7日第 1刷発行)
  こうして、貸金業者の登録制、出資法の制限金利の大幅な引き下げ(年109.5%から段階的に年40.004%へ、現在では年29.2%)等のほか、個別的、具体的な契約関係についても債務者に対する契約証書及び受取証書の交付を義務付けるなど、貸金業者にムチ打つ規定を設けたが、他方で、利息制限法超過利息の支払いを無効としたまま貸金業者に契約証書及び受取証書の交付を強制する事は却って法の趣旨としない「ヤミ金融」を助長する結果となりかねないので、法43条で一定の要件の下に利息制限法超過利息等の支払を有効な債務の弁済にして、貸金業者に保護(アメ)を与え、もって資金需要者の利益保護という立法目的を達成しようとしたものである。すなわち、法は43条で貸金業者にも一定の保護を与えることによって「資金需要者等の利益保護」(1条)という最終的な立法目的を達成しようとしたものである。
 その具体的規定である貸金業法43条は、法17条(1項)において、資金需要者が貸金業者との間で金銭の貸付けに関する契約を締結するにあたり、その契約内容について書面において明らかにされなく、あるいは借用書などに代表される差し入れ書面は作成されていても、それが契約の相手方に交付されていないと、後日になって契約内容について紛争が生じる恐れがあるとして規定されたものであり、また、その契約内容についても、取り決めたことの記載の無い重要項目があってはならないものとして、所定の要件を記載するよう規定されたものである。
 また、法18条(1項)は、契約者が貸金業者へ金銭を支払っていながら領収書を、受け取っていなかった為に、後日、支払の有無そのものや、充当内訳をめぐって紛争が生じる事を防止するために規定されたものである。そして法43条(1項・3項)は、貸金業者(登録業者)が前述法17条・18条に規定する書面を交付し、その上で契約者が任意に支払ったときは、利息制限法を超過する利息(損害金)の支払であっても、有効な返済とみなすというものである。
2. 平成18年1月13日最高裁判決後における現在の実体
 貸金業法の施行から23年経過した平成18年1月13日、最高裁は貸金業法18条1項にかかる内閣府令(施行当時は大蔵省令)である施行規則15条2項の一部記載事項の省略規定そのものが違法であり無効であると判断した。この最高裁判決そのものを非難するものではないが(事実、被告を含めた健全な貸金業者は、本判決を受けたあと数ヶ月の間に、内閣府令の改正等に伴う17条書面や18条書面の改訂を行っている)、それにより、本来不遡及である筈の過去の取引について43条の成立が不可能となり、事実上、貸金業法43条は成立当時から死文化した事態となった。
  そして、現在では、多重債務者(多数の借り入れを行い、その返済に負われ一定の生計を立てることが困難な状況にある者)以外の者からの過払金返還請求が多数発生している事態となっている。また、その返還請求者は、貸金業者との間で、お互いに長期間健全に取引を継続してきた者がほとんどであり(過払いとなるには相当期間の取引が必要)、そのような消費者との間では、貸金業法が規制(実現)したかった、契約・返済関係のトラブルは一切発生してないという実体がある。
 以上の次第で、我が国の貸金業者を取り巻く環境は、利息制限法や出資法が成立した昭和29年、利息制限法を死文化させた昭和39年及び43年最高裁判決、貸金業規制法が成立した昭和58年、改正貸金業法及び改正出資法が成立した平成19年などにより、きわめて大きく変化しているが、こと、過払金返還請求においては、上記に述べたとおり、どんなに賢明な貸金業者であっても、利息制限法超過利息を受領すること(してきたこと)は問答無用で無効となっているのが現状の実体(債務整理ではなく過払金返還請求そのものをCM等で募集広告している法律事務所もある)であり、そして返還請求を求めるほぼすべての人との間で貸金業者はトラブルなく取引を行ってきたのである。
 本件訴訟においては,これらの事情・背景も考慮しなければならない。

第2. みなし弁済について
  被告は、原告と金銭消費貸借取引をおこなうに際し、貸金業法17条、同18条に定める事項を記載した書面を原告に対して交付しており、また、原告の弁済は任意に支払われたものであるから、本件原告と被告間の取引には貸金業法43条が適用されるべきであるが、原告との取引が長期間にわたり、全取引について立証するには多大な労力と時間を要し、訴訟経済合理性に鑑みて、本件については同条の主張をおこなわず、利息制限法所定利率に引き直し計算することには同意する。

第3. 悪意の受益者について
1. 悪意の受益者との主張に対して
  平成19年7月13日及び平成19年7月19日最高裁判決は、「貸金業法43条が認められるとの認識を有していたことについて、やむを得ないといえる等の特段の事情のない限り、過払金発生時から悪意の受益者により5%の利息が発生する。」 と判示している。
 この”特段の事情”が認められるケースは、例えば前述平成18年1月13日最高裁判決を受ける前において、利息制限法超過利息の受領に関する有効性につい て、ことあるたびに貸金業法43条の成立を主張し、実際に勝訴判決を受けてきた貸金業者が該当することになるだろう。
 しかしながら、過去において、貸金業法43条の勝訴判決を受けていない貸金業者はすべて特段の事情がなかったと判断すること、更に平成18年1月13日最高裁判決によって指摘された事由が克服(要件具備)されていなければならないなどということは、最高裁の意図することではないことは明白である。
 被告のような小口無担保無保証の貸付けを業とする貸し金業者は、利息制限法超過利息の受領に関する有効性について争いがあったケースにおいて、確かに貸金業法43条を法廷で主張することなく現在に至っているが、それは、
① 訴訟係属時点においてみなし弁済が立証できないから
  全国に幾百万の顧客を抱える貸金業者が、そのうちの1人の顧客についてみなし弁済を立証しようとするためには、貸金業者は通常、受け取り書面を各個別の顧客毎に集約して保管しているのではなく、全ての顧客について区別する事無く、営業店ごとに、年月日時刻順に集約して保存する(そのようにするしか現実的な集約方法が無いからである)から、保管している全ての顧客の受け取り書面から、当該顧客に関するもののみを取捨選択して証拠として提出せねばならず、しかもひとつのこらず取捨選択を行わなければならない。多くの貸金業者は、このような事後的な事情による立証活動の困難さから、みなし弁済の立証を見送っている
② 仮に勝訴判決を受けても弁済がなされないケースがほとんどだから
  小口の無担保無保証貸付けである為、仮に勝訴判決を得ても債務者以外に請求することが出来ず、請求しても実際に債務が履行されることの期待性に乏しい等の” 特段の事情”がある。(保証人を付して高額な貸付けを行う貸金業者が過去において主張してきたという顕著な事実がある。)
 という理由から来るものであり、多くの小口無担保無保証の貸金業者は、上記の通りの事情により、訴訟において多くの負担となる43条の主張・立証を”断念”してきた事情がある。
  ところで、貸金業法43条は、登録業者であり、貸金業法17条・18条に規定する書面を適正に交付し、任意に支払ったことが要件であるところ、被告会社はもとより、大手といわれる貸し金業者(アコム・プロミス・武富士等)のすべてが、貸金業法17条・18条に規定する書面について、不備であるとの理由で行政処分等を受けたことがないのであって、そして取引について当該顧客との間で、トラブルなく良好な関係でいるうちは、弁済についても任意に支払っているものと認識することは、まさに、最高裁判決にいう、貸金業法43条が認められるとの認識を有していたことについて、やむを得ないといえる等の特段の事情があったというべきである。

2. 悪意の基準時について①
  仮に、百歩譲って被告が悪意の受益者であるとしても、原告の弁済により過払金が発生した都度、各過払金に対して利息を付すべきであるとの原告の主張は認められるべきではない。民法704条にいう「悪意」とは、具体的利益に対してこれを収受する権限のないことを具体的に認識している状態をいう。すなわち、「悪意」ありと認められるためには、その前提として、具体的に受益があったこと自体を認識している(受益に対して「故意」つまり受益に対する表象及び認容があると言い換えても良い)必要がある。
 しかしながら、被告は、本件訴訟に直面して初めて、みなし弁済の立証が困難であるとの認識を有し、本件訴訟においてこれを特段具体的に主張立証することを断念するに至ったのであり、それよりも前の時点で、自己の収受していた弁済のうち制限利率超過部分について受領権限がないと認識した事実は無い。本件訴訟が提起されるにあたって、被告がみなし弁済の立証可能性を初めて具体的に検討し、その結果断念し、この時点で初めて自己が弁済として受領した制限利息超過部分に保有権限が無いことを認識するに至ったのであるから、民法704条の利息を付すべき始期は、訴状送達の翌日であると解するべきである。
3. 悪意の基準時について②
  平成19年6月7日最高裁判決は、「同一の貸主と借主との間でカードを利用して継続的に金銭の貸付けとその返済が繰り返されることを予定した基本契約が締結されており、当該基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法所定の制限を超える利息の弁済により過払い金が発生した場合には、弁済当時他の借入金債務が存在しなければ、これをその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含むものと解するのが相当である。」と判示した。
  被告は、そもそも当該判決は信販会社(オリエントコーポレーション)での事例であることや、明示の合意は一切ないことなどにより、過払金充当合意そのものを否認するものであるが、仮にこの充当合意により、過払金をその後に発生する新たな借入金債務へ充当するのであれば、被告を悪意の受益者とした年5分の利息は、取引終了時より付すべきであり発生都度付すべきではない。
 前記「過払金充当合意」には、最高裁判決により、「新たな借入金債務の発生が見込まれる限り、過払金を同債務に充当することとし、借主が過払金返還請求権を行使することは通常想定されていないものというべきである。したがって、一般に、過払金充当合意には、借主は基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという趣旨が含まれている」という。
 過払金は、本来、期限の定めのない不当利得返還請求権であり、発生時点からいつでもその権利行使が可能であるところ、当該過払金充当合意により、取引が終了しない限り、新たな借入金債務へ充当し、その結果充当により消滅した借入金には、(当然のことながら)利息制限法所定の利息さえも付さない(付すことが出来ない)というのであるから、このような過払金には、その発生時点より民法704条にいう悪意の受益者として年5分の利息は付すべきではなく、少なくとも、権利者が取引の継続を望まず、取引が終了し、過払金の返還請求を行った等の時点より年5分の利息を付することが、民法412条の規定の趣旨からも適当である。
 すなわち、継続的な金銭消費貸借取引の場合に発生した過払金は、その後に生じる新たな借入金債務に充当されることが当事者の合意により予定されているところ、継続取引の場合、過払金の発生状況と、新たな借入金債務への充当による過払金の解消状況とが継続的に、あるいは継続的頻繁的に惹起する可能性が大きいと考えられる。そのような可能性がある場合、一般的に、借主は、過払金に利息を付して後の借受金に充当する意思を持って過払金の返還請求しない(する)ものとするのは相当では無く、また、貸主は、過払金に利息を付けて後の貸付金に充当する意志を有すると解するのも一般的に相当ではない。そうすると、過払金充当合意が含まれる継続的な金銭消費貸借契約を締結している当事者は、通常、当該取引が終了し、過払金の返還請求を行った等の時点までの期間においては、過払金に対して利息を付する意思を有しないと認めるのが当事者の合理的意思に合致するところである。
  このことは、当該過払金充当合意により、自己の過払金の運用を放棄していると解されること、民法704条が民法703条と違い、現存する利益にとどまらず、利得した金員の金額と、専ら賠償的性質として民事法定利率年5分の利息を付していることなどからも明らかである。(そうでなければ、当該過払金充当合意があるが故に、故意に長期間不当利得返還請求権を行使しないことで、弁済額から借入額を差し引いた金員以上の返還請求(例えば計50万円を借り入れ、計 150万円を返済したケースにおいて、110万円の返還請求を求めること)が可能となり、契約(合意)当時予測していたであろう内容と全く異なる結果を招くものであり許されない)
4. 悪意の基準時について③
- 基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において、過払金に付さる悪意の受益者としての利息の起算日は取引終了日の翌日であること
(1)主張の要旨
  仮に悪意の受益者としての利息の起算日を過払金の請求時点であるとの主張が認められないとしても、最判平成21年1月22日(以下「本最判」という。)の判断を前提にすると、少なくとも悪意の受益者としての利息(民法704条)の起算日は取引終了日の翌日である。以下詳述する。
(2)悪意の受益者としての利息返還義務の前提
 民法第704条は、悪意の受益者は「その受けた利益」に利息を付して返還しなければならないと規定している。当然のことながら、利息を付するためには「受けた利益」が具体的に確定している必要がある。
そして、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において悪意の受益者が「受けた利益」とは、過払金返還債務を意味する。
(3)「受けた利益」の確定する時期
(ア)本最判の判断(基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引における消滅時 効の起算点)
本最判は、
① 基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引においては、基本契約に基づく借入金債務につき利息制限法1条1項所定の利息の制限額を超える利息の弁済により過払金が発生した場合には、弁済当時他の借入金債務が存在しなければ上記過払金をその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意(以下「過払金充当合意」という。)を含む。
② このような過払金充当合意においては、新たな借入金債務の発生が見込まれる限り、過払金を同債務に充当することとし、借主が過払金に係る不当利得返還請求権(以下「過払金返還請求権」という。)を行使することは通常想定されていない。
③ したがって、一般に、過払金充当合意には、借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務の充当の用に供するという趣旨が含まれているものと解するのが相当である。
として、過払金返還請求権の消滅時効は基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点から進行すると判断した。
(イ)本最判の判断から導かれる「利益」の確定時期
本最判によれば、過払金充当合意には、(ア)①及び③のとおり、借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していればその返還請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務の充当の用に供するという趣旨が含まれているのであるから、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借契約が終了するまでは、悪意の受益者(である貸金業者)の過払金返還請求権も具体的に確定しないことになる。
 したがって、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において、悪意の受益者の「受けた利益」が具体的に確定するのは、基本契約に基づく継続的な金銭消費借貸取引が終了した時点である。

(4)結論(悪意の受益者の「受けた利益」の利息発生時期)
 基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引において、過払金に係る不当利得返還請求権が具体的に確定し、悪意の受益者が「受けた利益」が確定するのは、後の貸付の充当が行われないことが確定した取引終了日である。
  したがって、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引における悪意の受益者としての利息の支払義務が発生する時期は、取引終了日の翌日である。

(5)本主張と同様の主張を認めた具体的な判決例
  本主張と同様に、悪意の受益者としての利息の起算日を取引終了時の翌日であることを認めたものとして、山口地方裁判所宇部支部平成21年2月25日判決(平成20年(ワ)第229号。公刊物未登載)があり、「過払金返還請求権の消滅時効が、前記1(1)記載の通り継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点から進行すると解されるのは、過払金充当合意においては新たな借入金債務の発生が見込まれる限り、過払金を同債務に充当することとし、借主が過払金に係る不充当返還請求権(過払金返還請求権)を行使することが通常想定されていないから一般的に、過払金充当合意には、借主は基本契約に基づく新たな借入金債務の発生が見込まれなくなった時点、すなわち基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了した時点で過払金が存在していれば、その請求権を行使することとし、それまでは過払金が発生してもその都度その返還を請求することはせず、これをそのままその後に発生する新たな借入金債務への充当の用に供するという主旨が含まれているものと解するのが相当であるとされるからである(前記最高裁判所平成21年1月22日第一小法廷判決文参照)。そうすると、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引が終了するまでは、過払金返還請求権も具体化しておらず、これに対する悪意の受益者としての利息の支払義務も発生していないというべきである。」と述べているところであり、また大阪高判平成20年4月18日判決(平成19年(ネ)第3343号(最高裁不受理決定により確定済み)。公刊物未登載)においても、「本件各貸付は、基本契約に基づく連続した貸付取引であり、債務の弁済は、各貸付毎に個別的な対応関係をもって行われることが予定されているものではなく、基本契約に基づく借入金全体に対して行われ、充当の対象となるのも全体としての借入金債務であると認められるから、控訴人と被控訴人は、一つの貸付けを行う際に次の個別の貸付けを行うことが想定される契約関係にあることを前提に、複数の権利関係が発生するような自体の生ずることを望まなかったものといえ、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意していたと認められる。したがって、本件において、過払金の不当利得返還請求権の金額や内容は、後の貸付への充当が行われないこととなる取引終了日以降に確定するのであり、当該時点までは金額や内容が不確定、浮動的であって、後の貸付への充当の有無、充当額等により変動することが予想されるから、利得の金額や内容も不確定、浮動的であり、これにつき利息を付して返還させることは、当該利息の金額や内容自体不確定、浮動的である上、不当利得制度を支える公平の原理をも考慮すると、不相当である。本件において、上記最終完済日より前に取引が終了したといえないことは明らかであるから、控訴人主張の各日時をもって、上記利息を付することのできる開始時点とすることはできず、上記最終完済日以降、新たな借入や返済がされることがなくなり過払金の不当利得返還請求権の金額や内容が確定して取引が終了したということができ、当該時点からの利息を付した返還を認めることができる。」と述べているところである。
 したがって、これらの判決からも明らかなとおり、基本契約に基づく継続的な金銭消費貸借取引における悪意の受益者としての利息の支払い義務が発生する時期は、各過払金の発生時ではなく、取引終了日の翌日である。

第4. 返還すべき過払金は経済的合理性の観点により減額されること
1. 主張の要旨
これまでの被告の主張に基づいて算出された過払金のうち、実際に原告から返還すべき金額は、以下に述べるとおり、経済的合理性の観点に基づいて過払金から45%相当分を減額した金額となる。
2. 返還請求権の範囲について
(1)現存利益について
 被告は既に述べたとおり、悪意の受益者であることについては争うところであり、被告が善意の受益者であれば、本件不当利得返還請求において、現に利益の存する限度で利得を返還すれば足りる(民法703条)。
 被告は原告を含め、顧客より受領した利息制限法超過利息の一部については既に法人税として納付しており、法人税として納付した部分に相当する範囲において被告において利得は現存していない。
 従って、被告は、本件訴訟においても現に利益の存する限度である、原告より返済として受領した過払金のうち、既に法人税として納付した部分を除外した残余の部分について原告に返還すれば足りるものである。
 原告からは、法人税の納付による金銭の消失は何ら被告が原告から得た不当利得とは関係ないとの反論が予想されるため以下に述べることとする。
  ここで、いわゆる現存利得について念のため述べておくが、不当利得者のみならず、契約を取り消した未成年者(民法121条)や善意占有者(民法191条)などが物や金銭の返還義務を負うとき、取得したすべての利益を返還させることは酷なので、費消、消滅毀損した分は差し引いて、現に利益を受ける限度で返還すればよいとされている。
 たしかに、金銭の不当利得において利得が現存しないとされるためには、単に当該金員をもって他者に対する債務を弁済したり、必要な生活費を支弁したことだけでは足りない。
  本件について、金銭の不当利得によって法人税を支払ったにもかかわらず、利益の現存が認められる場合を考察すると、利得者が損失者より得た利益によって、本来支払わなければならない法人税を納付した場合である。すなわち、被告は原告より得た利得によって法人税を支払うことにより、本来であれば当該法人税を支払うための他の支出を免れていたことになるのであるから、このような場合であれば、現存利得はあることとなる。
 一方、ここで被告が指摘しているのは、利息制限法超過利息の受領による不当利得の取得と法人税の納付による不当利得の喪失は密接不可分な関係であること、及び利息制限法超過利息の受領による不当利得の取得及び法人税の納付による不当利得の喪失がなければ、被告が他の財産を消費したとはみることができないということである。
 すなわち、被告は、原告を含む顧客から利息制限法超過利息の支払いがあれば、その得た利息を益金として法人税の税額を算出し国庫に納付することとなるが、利息制限法内の利息のみの支払いであれば、当該超過部分だけ益金は減少することから、当然算出される法人税の税額も減少することとなり、被告は、利息制限法超過利息が原告を含む顧客から支払われたからこそ国庫に利息制限法超過利息を益金とする法人税を納付していたのであって、被告による利息制限法超過利息の受領による不当利得の取得と法人税の納付による不当利得の喪失は密接不可分な関係にあったものである。そして、利息制限法内の利息の支払いのみであれば、被告において利息制限法超過利息を益金として法人税の税額を算出し国庫に納付すべき事情はないのであるから、利息制限法超過利息の受領による不当利得の取得及び法人税の納付による不当利得の喪失がなければ、被告が他の財産を消費したとはみることができない。
 したがって、被告が返還すべき過払金は、法人税として納付した限度において現存しないというべきである。
(2)現存利益に関する判例について
 実際、不当利得において利益が現存しないと認められた判例には以下のような事例がある。
① 最高裁昭和50年6月27日第二小法廷判決
準禁治産者が取消の対象である金銭消費貸借契約によって得た利益を賭博で浪費した事案において、「被上告人が本件金銭消費貸借契約に基づいて得た利益は、賭博に浪費されて現存しないものであるから、被上告人はその返還義務を負わないとした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。」として、契約を取消した行為無能力者に対する利得返還請求権に関する事例であるが、取消しうべき行為によって得た事実上の利益が、そのまま又は形を変えて残存しているときにかぎり、これを返還するを要し、またはそれだけの返還だけで足り、受け取ったものを浪費したときは、利益を現存しなくてよいとされている。
② 名古屋地裁昭和60年11月15日判決
 被告が第三者から取立てを依頼された手形を銀行(原告)に預け入れ、手形が不渡りになっているにもかかわらず、手形相当金額を普通預金口座から払戻しを受け、被告が払戻し後直ちに上記第三者に当該金員を交付した事例において、「被告は、原告から金1700万円の支払いがあれば右金員を(取立委任者)へ交付するが、本件本件手形が不渡りになれば(取立委任者)に交付する義務がないことを当然の前提として(取立委任者)から本件手形の取立に受任したものであることは明らかであり、被告は、金1700万円が原告から支払われたからこそ(取立委任者)へ交付したのであって、被告による右金員の取得と喪失は密接不可分な関係にあったものである。そして、右以外には、当時被告において(取立委任者)の支払いをなすべき事情は、本件全証拠によっても認められないから、右1700万円の取得及び喪失がなければ、被告が他の財産を消費したとみることはできない。従って、被告が返還すべき利益は現存しないというべきであり、抗弁は理由である。そうであれば、原告の不当利得の請求も理由がない。」として、被告に返還すべき利益は現存しないことを認めたものである。
③ 高松高裁昭和45年4月24日第二民事部判決
  旧軍人の遺族扶助料の支給裁定の取消処分に基づき、誤払いされた遺族扶助料について返還を求めたところ、既に、自己の生活費、学費等に費消していた事案において、「その金額は比較的少額であり、また、支給方法も一定額を継続的に支給するというものであるから、前期認定のごとき事情にあった被控訴人の当時の生活状態からすると、この程度および形による収入の増加については、一般低所得給料生活者の昇給の場合と同様、それに伴って応分の支出の増加が生じたに相違ないものと認められるとともに、かような収入の増加がなかったならば、それはそれで右のごとき余分の支出をしないで済ますこともできたはずであると推測されるのである。のみならず、かりに右扶助料支給されたのちしばらくは、これによって喪失を免れた財産が一部残存していたとしても、被控訴人に対してその返還請求がなされたのは右扶助料の最終支払日からでもすでに約5年が経過したのちのことであるから、その間には、右残存利益も、本件扶助料の支給にもとづく収入の増加に応じて拡大された生活規模に見合う支出のためにことごとく費消されてしまったものと推認するのが相当であって、これらの点を総合して考えるならば、本件においては、被控訴人の得た利益は有形的に現存しないばかりではなく、それを得た事によって喪失を免れた財産もなく、その他これを得なかったならば他の財産を費消していたであろうと認められる事情もないというべきであり、したがって、被控訴人の受けた利益はすでに現存しないと認めるのが相当であるといわなければならない」として、不当利得によって収入が増加することに起因した支出の増加についても、利益の現存を否定した事例である。
(3)運用利益について
  また、原告からは、仮に被告の主張が認められ、被告が善意の受益者であるとしても、最高裁昭和38年12月24日第三小法廷判決を根拠に、被告は原告から得た不当利得を運用することにより利益を得ているのであるから、運用利益も返還すべきであるとの主張が予想される。
 しかしながら、上記判例は、甲会社の設立に際して財産引受が無効であったため、その引き受けた丙会社の乙銀行に対する手形金債務の弁済が無効とされた事案であるが、乙銀行が当該弁済金を受領してから返還するまでの間のこれを運用して得べかりし商事法定利率による利益の返還につき、「不当利得された財産について、受益者の行為が加わることによって得られた収益につき、その返還義務の有無ないしその範囲については争いのあるところであるが、この点については、社会通念上受益者の行為の介入がなくても不当利得された財産から損失者が当然取得したであろうと考えられる範囲においては、損失者の損失があるものと解すべきであり」と述べているとおり、実際に被告が過払金によっていかなる運用利益を上げたか否かではなく、あくまで損失者である原告について支払った過払金について当然収益を取得したと考えられるかどうか判断されなければならず、かつ、「したがって、それが現存するかぎり同条にいう「利益ノ存スル限度」に含まれるものであって、その返還を要するものと解するのが相当である」と述べているとおり、仮に当該過払金について原告が社会観念上被告の行為の介入がなくても不当利得された財産から当然取得した収益が考えられるとしても、すでに述べているとおり、被告においてすでに法人税の納付により、それが現存していないのであるから、やはり被告が返還すべき過払金は法人税として納付した限度において現存しないというべきである。
(4)小括
  以上述べたとおり、利息制限法超過利息の受領による不当利得の取得と法人税の納付による不当利得の喪失は密接不可分な関係であること、利息制限法超過利息の受領による不当利得の取得及び法人税の納付による不当利得の喪失がなければ、被告が他の財産を消費したとはみることができないことにより、被告が返還すべき過払金は、法人税として納付した限度において現存しない。
3. 原告の返還請求権の具体的な範囲について
  上記2で述べたとおり、被告が返還すべき過払金は、法人税として納付した限度において現存しないところであるが、具体的に被告が取得した過払金のうちどれくらいの割合で法人税として納付されたことにより、利益が現存していないかについて、以下に述べるものとする。
 被告会社は、日本国内に本店を有する法人であることから、これまで各事業年度において法人税の納税義務を負い、実際に納付を行ってきた。その納付額は、過払金返還請求が多数発生している、ここ数年の事業年度は除いて、その以前においては毎年450億円程度にのぼるものであり(周知の事実、被告アイフルホームページ参照)、各事業年度の所得に対しておよそ40%程度の法人税有効税率を乗じて算出されている(公知の事実)。
 しかしながら、既に述べているとおり、被告会社においては、貸金業法を遵守することにより利息制限法超過利率による貸金契約を消費者と締結し、利息制限法超過利息を受領することにより、その利息金を益金として各事業年度において所得の額を計上してきた所である。
 すなわち、既に被告会社が支払った法人税には、利息制限法超過部分の利息が含まれていたものである。
概算ではあるが、過去の顧客との契約金利の平均を28%とすると、そのうち利息制限法超過部分(金利18%~28%の部分すなわち10%相当部分)は、いわゆるグレーゾーン金利帯からの収入ということとなる。すなわち、被告会社における毎年の収入額のうち約35%(10%÷28%×100)はグレーゾーン金利帯に該当するのであるから、今になって、貸金業法43条のみなし弁済を否定するのであれば、当然、被告会社における毎年の収入額は35%減少した金額だったことになる。
 当然、収入が減少するのであれば、その収入の益金として算出し納付してきた法人税の金額は過大なものであったところであり、言うなれば、「税金の払い過ぎ」の状態だった。
 仮に利息制限法超過部分の利息を含めた収入(益金)を100とすると、概ね損金は65、益金から損金を差引いた課税所得は35となり、毎年利息収入の35%が課税所得だった計算となる。
  ここで、仮にグレーゾーン金利帯の収入がなかったとすると、収入は35%減少することとなるから、収入(益金)は100から65に減少することとなり、損金65を差引くと、課税所得は0となる。
 すなわち、被告会社において、仮に全ての取引についてみなし弁済を否定されると、法人税として納付すべきだった税金はほぼ0となる計算となり、支払った法人税は、全てグレーゾーン金利帯からの収入すなわち利息制限法超過部分の利息金より支払ったこととなる。
 実際に支払ってきた毎年の法人税額は、毎年受領してきた利息制限法超過部分の利息金額の約45%程度に相当することにより、毎年受領してきた利息制限法超過部分の利息金のうち、その約45%については法人税の原資となっていた計算となる。言い換えれば、過払金の約45%は既に税金として支払っていて、被告の手元には残っていないこととなり、経済的合理性の観点から言えば、原告に対しては過払金の残余の部分、すなわち被告の手元に残っている過払金の55%相当の部分のみ支払えば足りる。
4.結論
 したがって、実際に原告へ返還すべき金額は、原告被告間の取引を利息制限法所定利率で再計算して算出された過払金のうち経済的合理性の観点に基づいて45%相当分を減額した金額、すなわち過払金の55%に相当する金額である。

第5. まとめ
 以上の次第で、原告被告間の取引について利息制限法所定利率により再計算するとしても、実際に原告に返還すべき金額は、原告被告間の取引を利息制限法所定利率で再計算して算出された過払金の金額(別紙1取引計算書の「貸付日・入金日」欄に最も直近の日が記載されている行の「元金残高」欄の金額)の55%に相当する金額となることから、原告の主張は認めることは出来ない。

陳述の擬制
 被告は都合により口頭弁論に出廷できないため、本答弁書をもって擬制陳述とさせていただきたくお願い申し上げます。
 なお、次回期日については、訴訟準備の関係上、2ヶ月程度後に設定頂きますようお願い申し上げます。

証拠方法
1. 追って適宜提出する。
以上





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コメント

  1. 過払い太郎 | URL | DmTjjR5A

    おつかれさまです

    こんにちは、過払い太郎です。
    答弁書のアップ、おつかれさまでした。

    リライトの大変さは、私もよく分かるので、
    このボリュームをみて、ビックリしました(笑)。

    事前に、相手の動き(主張)が分かるので、
    とても心強いエントリーだと思います。

    当方でも、全力で丸投げしました(笑)。

    良い結果となることを祈念しております。

  2. 所長 | URL | -

    2トップ

    現在のネット過払いでは、ウィルさんと太郎さんで最強2トップですね。

    お二方のブログを読めば、
    怖いもの無しっていう感じです!!!


    >経済的合理性の観点に基づいて45%相当分を減額した金額

    ←社会的一般常識の観点に基づいて100%払いなさい。

    彼らの、過去の不利になる判例を

    見えなくする能力は賞賛に値しますねww


    ウィルさん、ありがとうございました。
    毎度思いますが、深夜に為になるブログを書いていただき、
    本当に感謝です。

  3. ウィルキンソン | URL | -

    >過払い太郎さんへ
    太郎さん始めみなさんに助けられた事を考えればこれぐらいの手間隙はなんでもありません・・・とか言いながらさすがに土日の大半を使ってしまいました。
    いやあ、リライトって大変ですね。
    いつもやってる太郎さんにはアタマが下がります。

    >所長さん
    単に夜更かしなだけなんです。
    しかも、私のブログはどっちかというと過払い請求の「雰囲気」重視なので
    あんまり為にはならないかと・・・。
    2トップの一角とはいかないまでも
    過払い請求の門戸を広げるくらいの事は貢献していきたいものです。

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